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『そして僕らは』:催涙雨36

長編作品 『そして僕らは』:催涙雨36 (藤堂×赤井?/パロディ)




 その後、赤井に丸い珠を渡せた事に満足したのか、栗栖は「それ、ちゃんと持っていて
下さいね」と言って呆気なく去って行った。
 無論、去り際に「また明日も来ますから」と言うのも忘れなかったのは言うまでもない。

 一方、手渡されてしまった丸い珠の正体を聞き逃した赤井は、相手を引き止めて聞き出す
程の気力がなかったのか、去って行く栗栖を見送る事しか出来ずにいた。
 栗栖の姿が見えなくなるまで、栗栖の後姿と手の中にある丸い珠を交互に見ていた
赤井は、栗栖の姿が見えなくなった頃合になってようやく、「まぁ良いか」と呟いて丸い珠を
懐に手に入れた。

 丸い珠の正体は気になるが、これから先いつでも栗栖に聞く機会はある。
今は丸い珠の正体を悩むよりも、栗栖にこれ以上の心配をかけない様にゆっくりと休もうと
考えて、赤井は窓をしっかりと閉めてから寝台に戻った。

「…まだこっちに来たばかりなんだから、疲れてなんかいられないよな…」

 今度こそ、ふかふかの温かい布団に包まって本格的に寝入る体勢になりながら、
次に目が覚める時には疲労回復している事を願って、赤井はポツリと呟いた。

 天の東側ではほとんど感じる事のなかった疲労を感じるのも慣れない環境に戸惑って
いるからだと考えていた赤井は、早く天の西側の環境に慣れれば良いと思って襲って来る
眠気に身を任せた。
 意識が途切れる間際、赤井はさらさらと水が流れている音を耳にした様な気がしたが、
それをはっきりと認識する前に赤井の意識は呆気なく途切れた。



 翌日。ぐっすりと深い眠りついていた赤井は、何度となく響くコンコンと言う音を耳にして
目を覚ましていた。
 恐らく、音がなければそのまま眠り続けていたに違いない程に熟睡していた赤井は、
目を覚ますと同時に一瞬自分が何処にいるのか把握する事が出来ず、パチパチと双眸を
瞬いていた。

 どうやら、深い眠りの最中で夢か現実か分からなくなってしまう様な夢を見ていたらしく、
唐突に覚醒させられて頭が現実に追いつかなかったらしい。と言っても、目覚めた瞬間に
夢の内容も綺麗さっぱりと忘れてしまっていたので、余計に赤井の混乱は増していた。
 自分が夢を見ていたらしい事は何となく分かる。けれども、内容が全く思い出せない。
それがもどかしくて、赤井が軽く首を傾げたまさにその時。再び、コンコンと部屋の扉が
叩かれる音が響いた。

「瞭、大丈夫か?」

 直後、扉の外側から聞き慣れた蒼山の声音が届いて、赤井はひとまず夢の内容について
深く考える事をやめた。

「大丈夫だよ。今行くから」

 普通なら何が大丈夫なのかと疑問に思うのだろうが、長年の付き合いで蒼山の言葉が
寝過ごしてしまった自分を心配する言葉であると言う事を知っていた赤井は、自分が思って
いたよりも寝過ごしてしまった事に気付いて声を上げる。

 それと同時に勢い良く寝台から立ち上がり、赤井は何をするより先に窓を開いた。
直後、窓から差し込む光の位置からかなり寝過ごしてしまった事を改めて認識して、微かに
顔を赤らめる。
 窓の外に見える光の位置が、いつもなら朝食を食べ終わって歌い始めている時とほとんど
同じ位置にあったからだ。

 これだけ寝過ごしてしまったなら、目覚めた後に昨日感じていた疲労を感じなかったのも
当然だと思って、赤井は手早く着替えを済ませる。

「さぁ、今日も頑張ろう」

 手早く着替えた後に、赤井は自分自身を励ます様に呟いて、部屋の扉を開いた。
そして、扉の前で心配そうな表情を浮かべて赤井の準備が整うのを待っていた蒼山の姿を
認めた刹那。

 赤井はいつもの様に「おはよう、修平」と言って微笑んだのだった。

 


 【水月の一言】
 やっとの事で、三日目に突入しました。
 何となく、色々と書きすぎてしまった様な気がします。
 36話でやっと三日目って…『催涙雨』が完結するまで
 何話かかるのだろうかと本気で不安に思っています。
 
 

テーマ:二次創作(BL) - ジャンル:小説・文学

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