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『そして僕らは』:催涙雨33

長編作品 『そして僕らは』:催涙雨33 (藤堂×赤井?/パロディ)




 その後、赤井は困惑しながらも二時間近くの間、ほとんど休まずに歌い続けた。
歌い始めた当初はいつも歌う様な歌を歌っていたが、後半になるとその大半が即興歌に
なっていた。

 それもこれも、どんな歌を歌っても客人達が感嘆した表情を浮かべて拍手していた為、
歌っていた赤井も聞いた事のない様な歌で客人達の拍手に答えようと思ったからだ。
 勿論、即興歌なので名もない曲であるばかりか、その場で思い浮かぶままに歌った曲
ばかりだったのだが、それでも客人達の盛り上がりが変わる事もなかった。

 そして、全ての曲を歌い終えた赤井がペコリと頭を下げた時、客人達は一斉にその場に
立ち上がって盛大な拍手をしたのだった。

「…あ、ありがとうございます…」

 未だかつて、大勢の客人達からこんな風に盛大な拍手をされた事もなかった赤井は、
思わず客人達に向かってそう語りかけていた。
 天の西側に来てから初めて本格的に歌ったのが、沢山の客人達から盛大な拍手で
受け入れられるとは思っていなかった為、赤井の声音には戸惑いすらも感じられる。


 そんな赤井の戸惑いもよそに、客席におりていた藤堂が赤井を手招いたのは、それから
すぐ後の事だった。
 これからどうすれば良いのか。それすらも疑問に思っていた赤井は、深く考えもせずに
客席に降り立ったのだが、次の瞬間にはその選択を後悔していた。

 と言うのも、客席に降り立った直後に大勢の客人達に取り囲まれてしまったからだ。
その上、先程まで拍手をする時以外は静かに歌を聞いていた筈の客人達に次から次へと
話しかけられてしまったのだから、赤井は更に自分の選択を後悔する事になった。

「今日の歌はいつになく素晴らしい歌でしたな。――ところで、歌い手殿は如何にして
 その類稀なる歌声を得られたのですか?」

「曲目の中には天帝秘蔵の物もありましたが、それは一体どの様に学ばれたのか
 聞いてもよろしいですか?」

「後半の曲は今まで聞いた事がない物がありましたが、あれはどの様な成り立ちのある
 曲なのでしょう?」

 挙句、彼らの言葉はそのほとんどが話しかけると言うよりも、問いかける言葉だった。
それも、何とも答えようのない問いかけばかりである。
 今更ながら、藤堂と初めて会った時も同じ様な事を聞かれた事を思い出して、赤井は
天の西側に住む人々は誰でも好奇心旺盛なのだろうかと疑問に思った。
 無論、その間も次から次へと答えようのない問いかけが投げかけられて来たのだが、
歌っている本人でも分かっていない事があるのだから答えようがない。

 果たして、自分でも良く分かっていないのだと言う事をそのまま答えて良い物なのか。
それすらも判別がつかなかった赤井は、反射的に視線を藤堂に向けていた。
 しかしながら、藤堂は客向けの笑みを浮かべているだけで、赤井を手助けしてくれる事も
なかった。
 心なしか、その笑みが現状を楽しんでいる様に見えてしまった赤井は、暫し困惑した
表情を浮かべていたものの、ついには覚悟を決めて客人達の問いに答え始めた。

「皆さん、今日は歌を聞いてくださってありがとうございました。――まずは、最初に
 質問のあった歌声についてですが、そちらについては―――」

 歌っている本人ですら良く分かっていない事を説明するのは根気がいる事だったが、
問いに答えないと言う選択肢を考えつく事が出来なかった赤井は、一つ一つの問いに
自分なりの答えを返していた。
 勿論、言葉では説明しようがない物事に関しては「ご想像にお任せします」と答えて
いたのだが、それでも一つ一つの疑問に答えようとする姿勢は、誰の目にも好ましく
映った。

 だが、それは同時に客人達の問いかけを更に増やしてしまう事でもあった為、赤井が
客人達の問いかけに答え終わったのは夕方近くの頃合だった。
 それも、それらの状況を見るに見かねた蒼山が「申し訳ないが、今日はこの辺りで
失礼させて頂きます」と言って、その場から半ば強制的に赤井を連れ出した事で一応の
終了となったのだから、そのまま放っておけば夜になっても終わらなかったに違いない。

 蒼山に手を引かれるまま客間に戻る事が出来た赤井は、長時間歌ったと言うだけでは
決して感じない激しい疲労を感じていた。




 【水月の一言】
 「話を進ませよう」と思いながら書いた所、
 かなり一日の経過が早くなった気がします。
 一日経過に10話も費やすよりはマシな方
 ですよね、きっと……。
 
 

テーマ:二次創作(BL) - ジャンル:小説・文学

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