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『そして僕らは』:催涙雨31

長編作品 『そして僕らは』:催涙雨31 (藤堂×赤井?/パロディ)




 それから暫くして、一言二言の会話を交わしていた赤井と蒼山の元に佐倉が姿を現し、
朝の挨拶を交わすなり二人を朝食の席に案内した。

 歓迎会が開かれた部屋とは異なる部屋に案内された赤井達は、部屋のテーブルに並ぶ
料理の数々を目にして、驚くよりも先にほんのわずかに引き攣った様な表情を浮かべた。

「……朝から随分多い食事だな。ここではこれが普通なのか?」

「…こんなに沢山、食べられないよ…」

 あり得ない食事の量に暫し硬直していたものの、蒼山が呆れた様な声音で問いかけたのを
聞いて赤井も苦笑と共に本音を呟いた。

 そんな二人の反応を見て、部屋にたどり着くまでほとんど無言だった佐倉がにこりと微笑む。

「そう思うでしょう? だけど、これでも一応は途中で止めたのよ。藤堂君から最高の料理を
 作ってくれと言われたからと言って、叔父達も加減する事なく料理を作り続けちゃうんだから
 困るわよね。叔父達の事だから、料理が余ったとしても賄い料理か何かにするでしょうけど。
 そう言う訳だから、無理に全部食べようと思わなくても良いわよ」

「それじゃあ、食べられるだけ食べる事にするよ」

 赤井達の心境が分かったのだろうか? にこりと微笑みながらも、佐倉は全く遠慮のない
言葉を口にした。
 その余りに遠慮のない物言いに安堵したのか、赤井もほとんど気を遣う事なく答えて
朝食の席に着いた。

 その後、佐倉は彼女の仕事に取りかかる為に部屋を後にしたので、赤井達は二人だけで
朝食を食べた。
 いつもは朝から沢山食事を取る事もない二人にとって、目の前に並んだ料理の数々は
見ているだけでも満腹になってしまいそうだったが、他に人がいないからか気安い会話を
交わしながら美味しい料理をゆっくりと堪能していた。

「…そう言えば、藤堂が今日から忙しくなると言っていたな…」

 一刻もかからず満腹になった二人は食後もその場でゆったりとした時間を過ごしていたが、
不意に蒼山が今まさに思い出したと言う様にポツリと呟いた。
 それも、どうやら赤井が何の気なしに口にした「今頃、藤堂はどうしているんだろう?」
と言う言葉でやっと思い出す事が出来たらしい。
 今まで忘れていたからか、それとも今になって思い出してしまったせいか、蒼山の表情は
何処となく苦々しい。

「――全く記憶にないんだけど、いつの話だ?」

「歓迎会の後だ。瞭は意識がはっきりしていなかっただろう?」

「…そうだったんだ…」

 昨夜の事を思い出してしまった蒼山と違って、全く記憶になかった赤井は心底不思議そうに
問いかけた。
 見るからに「何も聞いていない」と言いたげな表情を浮かべている赤井に、蒼山は未だに
憮然としたままの表情で答えを口にする。
 それを聞いて、全く記憶に残っていないのも当然だと気付いた赤井は、羞恥に顔を赤らめて
ポツリと呟いた。

「…い、忙しくなるって、何があるんだろう…?」

「さあな。その内、分かるんじゃないか?」

 今更ながら記憶に残らない程に飲みすぎてしまった事が恥ずかしくなって、赤井は羞恥を
振り払う様に無理やり話を進めた。
 それは、傍から聞いていても無理やり会話を進めた事が明らかだったが、蒼山は気付かぬ
素振りで淡々と答えた。

 その言葉にはどうでも良いと言う思いも含まれていたのだが、先を予想する事が出来ない
二人は知らない。


 半日後には、何故この時もう少し良く考えなかったのかと後悔する羽目になる、と言う事を。




 【水月の一言】
 ついに催涙雨が長編作品になりました。
 気付けば31話、そろそろ話を動かして
 山場に近付けさせたいです。
 
 

テーマ:二次創作(BL) - ジャンル:小説・文学

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